業界で広く使用されている当社の自動車データ。その制作現場で長年の課題となっていたレガシーシステムの刷新に、入社2年目のエンジニア・杉岡さんが挑みました。開発環境すら存在しないVB6のシステムを劇的にパフォーマンス改善させた開発の裏側と、次世代のシステム構想についてインタビューしました。

「地球上のどこにもない」開発環境からのスタート
── まず、今回のプロジェクトが立ち上がった背景について教えてください。
杉岡: 私が担当したのは、自動車データ制作チームが使用する、業務アプリケーションのパフォーマンス改善です。
このアプリケーションは、Visual Basic 6.0(VB6)で開発されたいわゆるレガシーシステムで、10年以上前に作られてから大きな改修がされていませんでした。そのため、データ読み込みや計算処理に数分待たされたり、特定の条件でフリーズして動かなくなったりと、制作現場の皆さんは非常に大きなストレスを抱えながら業務を行っていました。
── 10年以上前のシステムとなると、改修にはかなりの困難があったのではないでしょうか。
杉岡: 正直、最初は途方に暮れました。当時の開発者は一人も社内に残っておらず、ドキュメントも古いまま。何より一番の問題は、このアプリケーションをビルドして動かせる「開発環境」が、地球上のどこにも存在していなかったことです。
コードはあるけれど、それを触るための道具がない。まずは開発環境を現代に復元し、ブラックボックス化している内部仕様を解析するところからプロジェクトが始まりました。ここが今回のプロジェクトで最も苦労した点です。
「生成AI」を相棒に、未知のレガシーコードに挑む
── VB6という古い技術を扱う上で、入社2年目の杉岡さんはどのようにアプローチしたのですか?
杉岡: 私自身、VB6に触れるのは初めてでした。そこで今回は、解析・設計・実装のすべての工程で「生成AI」をフル活用しました。
具体的には、ボトルネックとなっている処理をAIに入力し、パフォーマンスを改善するための複数の設計案、それぞれの期待効果と影響範囲、リスク、実装コードまでをまとめて出力させます。私自身は提示された選択肢の中から最も効率的で効果が大きいものを「判断して選ぶ」ことに集中しました。レガシーな言語だからこそ、最新の技術である生成AIを使い倒すことで、経験不足を補いながらスピード感を持って進めることができました。

現場と開発をつなぐ「翻訳者」としてのこだわり
── 今回は3名体制のプロジェクトだったそうですね。
杉岡: はい。外部の開発会社のPM、SEの方と、私の3名体制です。開発パートナーの2名も同じフロアに常駐していただいたので、密に連携しながら進めることができました。
その中で私が意識したのは、同じ社内の同僚である「制作チーム(ユーザー)」と「開発チーム」をつなぐ「翻訳者」としての役割です。
── 具体的にはどのような動きをされたのですか?
杉岡: ユーザーからの「こうしたい」という要望を技術的な仕様に落とし込んだり、逆に技術的な制約や進め方をビジネス視点の言葉に変換してユーザーに伝えたりと、認識のズレが起きないよう徹底しました。
毎朝必ず朝会を実施し、進捗や課題を共有しながら進めた結果、当初の予定よりも前倒しで改修が完了しました。浮いた時間で、パフォーマンス向上以外のUI改善に応えたり、入念なユーザーテストを行ったりと、品質を大きく高めることができました。
処理時間は1/100以下に。そして「WEB化」へ
── 12月にリリースされたとのことですが、実際の成果はいかがでしたか?
杉岡: 劇的に改善しました。これまでデータ読み込みにかかっていた待ち時間はほぼゼロになり、最大で1000秒以上かかっていた重い計算処理も数十秒で終わるようになりました。もちろん、フリーズも完全に解消されています。
現場からも「サクサク動くようになって、ストレスがなくなった」と非常に喜んでいただけています。

── そして来期は、いよいよWEBアプリへのマイグレーションですね。
杉岡: はい。今回のVB6改修はあくまで通過点です。来期からは現在のレガシーシステムを脱却し、WEBアプリケーションへの完全移行を進めます。
目指しているのは、単なる「システムの置き換え」ではありません。制作チームは、自動車に関する豊富な知見を持つプロフェッショナル集団です。現在の古いシステムや複雑なフローを刷新し、彼らがクリエイティブな業務に100%集中できる環境を作りたいと考えています。
── 技術的にも新しい挑戦が増えそうですね。
杉岡: そうですね。将来的には、データのAPI提供や、機械学習による計算エンジンの実装、さらにはMCP(Model Context Protocol)を介して自然言語でデータと対話できるような仕組みも構想しています。
日本語で質問すれば、システムが答えてくれる。そんな未来を実現するための基盤作りがいよいよ始まります。
エンジニアとしての「やりがい」
── 最後に、この仕事の面白さを教えてください。
杉岡: 私はプログラマーになりたくてこの会社に入りました。入社2年目で、これほど重要なシステムの設計から実装までを任せてもらえていることに、毎日ワクワクしていますし、純粋に開発が楽しいです。
プロトコーポレーションの最大の武器は「データ」であり、それを生み出しているのが制作チームの皆さんです。私の仕事によって、彼らの知見が最大限に発揮されるようになれば、会社のビジネスはもっと強くなる。
自分たちが作ったシステムが、会社の成長や業界の動きに直結している。これ以上のやりがいはありません。
今回のVB6改修は、あくまで次世代システムへの通過点であり、来期から始まるWEB化プロジェクトによって、当社の「自動車データ」がどのように進化していくのか。業界のビジネス基盤を支えるシステムのさらなる発展に期待したいと思います。


